不況時の損失を最小限に抑えるためのポートフォリオ戦略(3STEP)


現在の強気相場は8年間続いています。これは過去の強気相場の平均継続年数よりもはるかに長いです。

さらに、S&P500のPERは過去平均をはるかに上回る 25 倍です。

次の景気後退が近いかどうかについては、世界中の投資家の間で議論が行われています。

次の景気後退がいつ起こるのかを予測することは不可能ですが、投資家は今後いつ来ても大丈夫なように、損失を最小限に抑えるためのポートフォリオをどのように組み立てるのか考える必要があります。

この記事では、次に訪れる不況のためにポートフォリオを作成する 3つの実践的な手法について説明します。

売却しないこと

次の不況で失敗しないための3つのステップを説明する前に、次の不況の中で株式を保有し続けることの重要性について説明したいと思います。

市場が落ち込むと、現金保有が魅力に思えます。例えば、S&P500が20%低下した場合、株式市場に資金を置いておくリスクよりも、インフレ率による目減りリスクを選択していた方が害は少ないと思うでしょう。

しかし、景気後退を予期してポートフォリオの保有銘柄を売却することは、必ずしも正解とは言い切れないいくつかの理由があります。

最も顕著なのは、キャッシュポジションを取ることによる機会費用です。景気後退のタイミングを誤って予測し、株式を売却した投資家は、S&P500がさらに10%、20%、50%と急騰するのを見守ることになります。

機会費用
時間の使用・消費の有益性・効率性にまつわる経済学上の概念であり、複数ある選択肢の内、同一期間中に最大利益を生む選択肢とそれ以外の選択肢との利益の差のこと。

それによって被った損失を機会損失と呼びます。

キャピタルゲイン税も問題です。

長期投資は、キャピタルゲイン税の無期限延期を可能にし、長年にわたって重大な配合効果を持つ「バフェットローン」を生み出します。

バフェットローン
例えば、値上がりしたからといって、1000万円分の株式を売却すれば、政府に20%の税金分 200万円を支払うことになります。

しかし、売却しなければ、払うはずの税金200万円をそのまま投資に回しているに等しいとも言えます。もちろん、その200万円は機会損失を受けることなく、複利効果でさらなる富を生み出す配合効果があります。

これらのことは、政府から実質的に融資を受けていることと同じであるというバフェット様のお考えを元に名付けられた名称です。 

保有株式を売却することにより、キャピタルゲイン税が発生し、バフェットローンのメリットが失われます。

景気後退の間にポートフォリオを維持しておくことで、投資家は引き続き配当を集めることができ、安価で株式を購入することができます。景気後退の最中に購入することは、長期的なポートフォリオ価値を構築する素晴らしい方法です。

不況時に株式を保有することは、長期的な投資戦略の重要な要素です。この記事の内容は、景気後退を予期して株式を売却する場合には適さない可能性があります。

ではこれから、景気後退時の損失を最小限に抑えるための3つの具体的なポートフォリオ戦略について説明します。

STEP 1 配当実績を積んだ銘柄

不況時の配当成長株の保有は、株価が下がっても配当はほとんどの場合増加し続けるはずであるため、有益と言えます。

不況時に配当を削減した場合、その銘柄は残念ながら売却すべきかもしれません。これは、投資家が景気後退期に配当を増やし続ける可能性が高い銘柄を見つけることができるかどうかが問われます。

最適な銘柄を見つけ出す良い方法は、一貫して配当の支払いを増やした実績のある企業を探すことです。

例えば、配当貴族は25年以上の連続した配当金の増加を行ってきた企業のグループを指します。

また、配当貴族は素晴らしい配当の歴史を持っていますが、さらに50年以上にわたり年間配当を引き上げている配当王という企業グループがあります。

配当王ともなると、あらゆる経済環境の中で成長を続ける能力と、配当金を払い続ける意欲を持ち合わせていることが連続増配年数から示されています。

景気後退期に一貫して連続増配銘柄を保有し続けることが有益であるもう一つの理由があります。

それは、これらの株式が歴史的に市場指数を上回っており、このパフォーマンス差の多くが景気後退期に発生していることです。

次の図と表は、配当貴族指数と S&P 500インデックスのトータルリターンを 10年という広範囲で測定したものです。

(出典:  S&P 500 Dividend Aristocrats Fact Sheet

配当貴族(配当込み)指数のパフォーマンスと他インデックスとの比較方法

上記「出典:〜」の欄に直リンクを貼っています。右側に表示されているチャートが配当貴族(配当込み)指数になります。

S&P500(TR)←配当込み指数と比較する場合は、チャート下にある「COMPARE AN INDEX」をクリックし、 検索窓にS&P 500 と入力します。(この時、S&Pと500の間に半角スペースを入れること)

一覧表示された候補の中から一番上の「S&P500」をクリックします。これで比較が可能です。

過去10年間での平均年率リターンは、S&P 500が 7.63 %だったのに対し、配当貴族指数は 10.44 %でした。

配当成長株を保有することは、不況時のロスを削減し、すべての経済環境下でのリターンを押し上げるはずです。

STEP 2 企業体質が優良な銘柄

企業体質が優良な銘柄でポートフォリオを構築することは、市場修正時にポートフォリオのリスクを最小限に抑えるもう一つの実用的な方法です。

ここでいう「企業体質」とは、経営における株主優位性、収益とその安定性、そして長寿のビジネスモデルを組み合わせた無形の特性を指します。

収益が比較的一定に維持されるため、景気後退時に株価はそれほど下落しません。なお、収益が一定のままであれば、株価の下落はバーゲンセールの合図となります。

配当性向によっても企業体質を測定することができます。リンディ効果によると、25年以上の増配を続けてきた企業は、今後も配当を増やす可能性が高いそうです。

リンディ効果
1938年に発売されたジョン・バー・ウィリアムズの著書「The Investment Value of Investment Value」の中で紹介された論理的な法則です。

例えば、バスタブ曲線が成り立つ人間の死亡率に対して、長く生きて、生き残れば生き残るほど死亡率が減少し、ますます寿命が延びやすくなるというモデルが考えられており、「リンディ効果」として知られています。さらに言えば、ある芸能人の露出が増えれば増えるほど、それ以後も出演依頼を受ける確率が高まり、芸能界での地位が強固になるようなことがリンディ効果の例としてあげられます。

つまり、事業継続年数が長ければ長い企業ほど、今後も事業が継続する確率は高くなり、配当継続年数が長ければ長い企業ほど、今後も配当を継続し続ける可能性が高くなるという法則です。

こちらは全英文版

こちらは日本語版

Amazonレビューより

本書は主流派(*)経済学と、グレアム=ドッド流の証券ファンダメンタルズ分析を融合した、有意義な証券価値理論を読者に提供します。
現在の経済学・証券論の基礎となる「割引現在価値」という概念を確立した古典的著作です。
経済学と投資理論の双方を論じる本ですから、「インフレや金利変動が証券価値にどう影響するか」などが詳しく論じられています。

株式や債券を購入する人は、本書やグレアム=ドッドの著作等を読んだ上で、
「自分は一体、何にお金を払ったのか?」を理解しなければいけません。

一方で本書は、「どんなタイミングで証券を売買すべきか」という投資・トレーディング戦略の本ではありません。
景気循環によって証券価格が変動するとは述べていますが、そのタイミングに合わせて売買して利益を出そうとすることは勧めていないのです。

現代ポートフォリオ理論が確立する以前の著作ですから、分散投資やアセットアロケーションについての言及も少ないです。

証券の本来価値の見極めという、深い目的に役立つ本といえるでしょう。

*著者の存命中、著者は反主流派扱いされていましたが、現在では著者の考えが主流派です。

経営体質を見抜くもう一つの方法は信用格付けを参考にすることです。

スタンダード&プアーズやムーディーズのような第三者の信用格付け機関は、信用格付けを判断する際に非常に選参考になります。現在、ジョンソン・アンド・ジョンソン(JNJ)とマイクロソフト(MSFT)のみが、S&PからAAA信用格付けを与えられています。

上記の2社のうち、特に優良で、企業体質の鏡と言えるのはジョンソン・アンド・ジョンソンです。注目すべきは、同社は毎年一定のペースで通貨調整後EPSが増加していっているということです。それも33年間もの間です。

J&J製品の多様性(売上高10億ドル規模の24製品)と株主還元(フリー・キャッシュ・フローの 70%が株主に返却され、54年間の連続した配当金増額)こそが、優良な企業体質の見本と言え、それは投資家の信頼に値します。

J&J のビジネスの安定性についての詳細は、下記をご覧ください。

(出典: Johnson & Johnson IR)

このように配当実績の長い企業(例えば、配当貴族や配当王)、歴史的な業績、そして永続的な競争優位を探ってみましょう。

これらの優良な企業体質の銘柄を所有することで、次の市場の低迷時にポートフォリオの保護に役立ちます。

STEP 3 低ボラティリティ銘柄

ボラティリティとは株価の「価格変動」の度合いです。

高いボラティリティの株式は、低いボラティリティの株式よりも株価変動が大きい傾向があります。(株価変動率は、標準偏差の統計的指標によって測定されます。)

投資家の間では、ポートフォリオ管理における株価変動の重要性について意見が分かれています。

高ボラティリティ株式の場合、個々の株価がより頻繁に下落するため、より多くの買いの機会をもたらすと主張する者もいます。

一方、一般的な投資家にとって、ポートフォリオの時価総額(自身の資産価値)が、日々大幅な変動をしているのを見ることは精神的苦痛を感じます。基本的に長期投資家はこういった変動を心配する必要はありませんが、それにもかかわらず、ついつい日々のポートフォリオの時価総額に気を取られてしまいがちになるものです。

ボラティリティに関する意見の相違に関わらず、不景気及び不安定な時期には、ボラティリティの低い株式は、ボラティリティの高い株式よりもリスクが減少する傾向にあることは間違いありません。

では、投資家はどうやって低ボラティリティ銘柄を特定するのかすればよいのでしょうか?

低ボラティリティ銘柄の識別には、事業評価と市場指標という2つのアプローチがあります。

まずは、低ボラティリティ銘柄がなぜゆえ価格変動が低い傾向にあるのかという理由を考えましょう。

その特徴とは、変化の少ない業界で事業を展開し、あらゆる市場環境を通じて需要のある製品やサービスを提供していることです。

これらの特徴を持った低ボラティリティ株式には以下のような銘柄があります。

  • ペプシコ(PEP)
  • キンバリー・クラーク(KMB)
  • クロロックス(CLX)
  • プロクター&ギャンブル(PG)
  • コカ・コーラ(KO)

一般的に、株価変動率が低い銘柄というのはヘルスケアおよび生活必需品の分野に集中しています。(例えば、低ボラティリティの代表的な存在である配当貴族の構成セクターは、ヘルスケア及び生活必需品が高比率となっています。)

これは定性的な観点から理にかなっていると言えます。消費者は、企業の収益と市場指数が低下しているからといって、治療費や食生活費などの必要な支出を削減することはできないからです。

また、低ボラティリティ指標の構成銘柄を見ることで、低ボラティリティ銘柄を特定することもできます。主な低ボラティリティ指標は、S&P500低ボラティリティ指標となります。その上位の構成銘柄は以下の通りです。

Low Volatility Index Constituents

(出典:S&P 500 Low Volatility Index 

S&P500 低ボラティリティ上位銘柄の確認方法

上記「出典:〜」の欄に直リンクを貼っています。右側に表示されているチャートがS&P500 低ボラティリティ(配当込み)指数になります。

構成銘柄は、チャートの上にあるメニューから「CONSTITUENTS」をクリックすることで確認できます。

STEP 1,2 と同様に、景気後退を予想した売買を行わない場合、ボラティリティの低い株式に投資するのは効果的です。当然のことながら、リスク調整後の優れたリターンを投資家にもたらします。

驚くべきことに、低ボラティリティ銘柄は、絶対収益をも改善します。

絶対収益(Absolute Return=AR
絶対収益とは、その資産が一定期間にわたって達成するリターンを指します。主にヘッジファンドの運用目標として用いられます。また、他の指標またはベンチマークと比較しないため、相対収益率とは異なります。

例えば、相対収益を追求する一般の投資信託では、株価指数(市場全体)が8%下落する局面でファンドの値下がりが5%で留まれば、ベンチマークを上回った成果として「良好な運用成績」として評価されます。

しかし、投資家から見れば値下がりは値下がりであり、投資資金が損失を被っている以上、財産形成に有効であったと評価するのは難しいものです。その一般的な投資信託の弱みを克服すべく、ヘッジファンドでは絶対収益を目標に運用されます。

絶対収益を追求する運用では、市場全体が上がっても下がっても、ファンドの価格を値上がりさせることを目指します。つまり、投資家の投資元本を下回ることを避け、常に収益を獲得し続けるスタンスで運用する運用法です。

これは、現代のポートフォリオ理論にある「より高いリスクは、より高いリターンをもたらす」という内容が必ずしも真実ではないことを示しています。

この現象の実証的証拠として、S&P 500低ボラティリティ・インデックス(TR)と S&P500(TR)のパフォーマンスを比較した⬇︎のチャートをご覧ください。

(出典: S&P 500 Low Volatility Index Fact Sheet

S&P500 Low Volatility Index(配当込み)指数のパフォーマンスと他インデックスとの比較方法

上記「出典:〜」の欄に直リンクを貼っています。右側に表示されているチャートがS&P500 Low Volatility Index(配当込み)指数になります。

比較手順は「STEP 1 配当金を目的とした投資」の補足内容と同じになります。

過去10年間での平均年率リターンは、S&P 500が 7.56 %だったのに対し、配当貴族指数は 9.56 %でした。(ステップ1で同様に紹介した資料は2017/1まで、こちらの資料は2017/5までと計測期間が若干違うので、S&P500のパフォーマンス値にも多少違いがあります。)

S&P 500低ボラティリティー指数は、長期的には(ほとんどの一定区間を切り取って比較しても)株式市場全体のパフォーマンスを上回っています。

したがって、市場調整のタイミングや市場が不安定な時期ではない場合でも、低ボラティリティ銘柄に投資することは有効だと言えます。

まとめ

ここまで、次に訪れる不況の中で自身のポートフォリオパフォーマンスを最小限の損失で抑えるための手順を書き綴りました。

次の不況がいつ訪れるのかは誰にもわかりません。私たちが次の不況について唯一知っている事は、それが避けられないということです。

幸いなことに、この記事で説明した投資戦略を実行することで、弱気相場でのリスクを低減するだけでなく 、強気市場でのリターンも高めてくれるポートフォリオを構築することができます。

将来の経済状況に関係なく、投資家のパフォーマンスを向上させるのに役立つでしょう。


銘柄選びに困ったら、こちらの記事も参考にどうぞ⬇︎

景気後退期に購入すべきディフェンシブ銘柄 TOP10(後編)

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景気後退期に購入すべきディフェンシブ銘柄 TOP 10(前編)

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